フレッシュなエキストラバージンオリーブオイルから、刈りたての草、トマトの葉、青いアーモンド、ハーブのような香りを感じることがあります。こうした香りは、後から加えた香料ではありません。オリーブの果実から自然に生まれる揮発性成分によるものです。
先に結論
オリーブの実が搾油工程で砕かれると、果実に含まれる酵素と脂肪酸が接触します。そこで始まる一連の反応が、リポキシゲナーゼ経路です。
この反応から、C5・C6アルデヒド、アルコール、エステルなどの小さな揮発性成分が生まれます。その一部が、オリーブオイルの青々しい香りやフルーティーな印象につながります。
ただし、香りは搾油の瞬間だけで決まるわけではありません。オリーブの品種、熟度、搾油までの果実の状態、粉砕や練り込みの条件、抽出方法、完成後の保管も影響します。
実を砕くと何が起こる?
実が形を保っている間、酵素と反応材料は細胞構造によって分けられています。粉砕によって細胞が壊れると、リポキシゲナーゼなどの酵素が、リノール酸やリノレン酸といった多価不飽和脂肪酸に作用できるようになります。
反応の途中でヒドロペルオキシドがつくられ、別の酵素によってアルデヒド、アルコール、エステルへと変化します。これらは空気中へ移動しやすいため、鼻に届くと香りとして感じられます。
ヘキサナール、cis-3-ヘキセナール、trans-2-ヘキセナールなどは、青い香りと関係する代表的な成分です。なかでもtrans-2-ヘキセナールは、草や青いアーモンドを思わせる印象と結びつけられています。ただし、実際の香りは一つの成分ではなく、複数の成分の組み合わせです。
香りがオイルごとに違う理由
オリーブの品種
品種によって酵素活性や揮発性成分の構成が異なります。同じような条件で育て、同程度の熟度で搾った場合でも、品種ごとに異なる成分パターンが確認されています。
果実の熟度
収穫時の熟度は、酵素の働きと反応材料の量に影響します。早摘みの果実は青い印象につながることがありますが、収穫時期だけで香りや品質が保証されるわけではありません。
搾油までの管理
収穫した果実を長く、または不適切な環境で保管すると、揮発性成分の構成が変わり、好ましくない香りが生じる可能性があります。速やかで丁寧な処理は大切ですが、「何時間以内」という情報だけで完成したオイルの香りを証明することはできません。
練り込み時間と温度
粉砕後のペーストは、油滴をまとめるためにゆっくり混ぜられます。この工程の時間と温度は、酵素反応、香りの形成、揮発による損失に影響します。低温や短時間であれば常に最良という単純な関係ではなく、香り、抽出量、ほかの品質要素のバランスが必要です。
搾油後の保管
オイルになった後も、香りは変化します。酸素、熱、光、時間は、好ましい香りを弱め、酸化に由来する別の揮発性成分を生むことがあります。搾油時に香りをつくるだけでなく、その後に守ることも重要です。
青い香りがあれば高品質?
青々しい香りは好ましい官能特性の一つですが、それだけで品質や鮮度を証明するものではありません。エキストラバージンの分類には、規定された官能上の欠陥がないことと、化学的な基準への適合が必要です。香りの強さも、品種やスタイルによって自然に異なります。
青い香りは、果実、酵素、製造、保管について手がかりを与えてくれます。味わい、欠陥の有無、トレーサビリティ、分析情報と合わせて見ることが大切です。
香りを確かめる方法
清潔なグラスに少量を注ぎ、手で軽く温めます。短時間ふたをしてから、味わう前に香りを確認してください。
刈りたての草、トマトの葉、ハーブ、青いアーモンドなど、自分が実際に感じた言葉で表してみましょう。決まった答えに合わせる必要はありません。官能表現は、誇張した広告にするより、オイルを丁寧に比較するために使うほうが役立ちます。
まとめ
バージンオリーブオイルの青い香りは、オリーブの実に由来し、粉砕によってリポキシゲナーゼ経路の酵素反応が始まることで形づくられます。その後、品種、熟度、製造条件、保管によって、残る揮発性成分と感じ方が変わります。
つまり青い香りは、香料でも、一つの製造方法だけの結果でもありません。果実の化学、搾油工程、そして搾油後の保存が重なって生まれる感覚です。
参考文献
- Angerosa F, Basti C, Vito R. “Virgin olive oil volatile compounds from lipoxygenase pathway and characterization of some Italian cultivars.” Journal of Agricultural and Food Chemistry (1999): https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10552376/
- Ridolfi M, et al. “Characterization of the lipoxygenases in some olive cultivars and determination of their role in volatile compounds formation.” Journal of Agricultural and Food Chemistry (2002): https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11829653/
- Genovese A, et al. “Flavor Chemistry of Virgin Olive Oil: An Overview.” Applied Sciences (2021): https://www.mdpi.com/2076-3417/11/4/1639